良心市

 良心市って知ってますか。

 あぜ道の四つ辻に、屋根の付いた、お地蔵さんの祠みたいなコーナーがあります。要するに農作物無人販売所。置いてあるのは、たいていがそこの畑で取れたちょっと曲がったキュウリ10本入り100円とか。とにかく安くて、新鮮。
 「姿は悪いけど、おいしいんだから、みんなに食べてもらいましょう」という農家の心意気、まさに良心的な市なのだ。

 もうひとつの「良心」は、買う方の心がけ。無人だから代金の収納方法には工夫をこらしてある。
 一番簡単なのはジュースの空き缶を針金で柱にくくりつけているタイプ。そのバリエーションで塩ビのパイプを使って手づくりしたものを柱に鎖でつないだもの、さらにその鎖に鍵がついているもの、などなど・・・。鉄板を四角く溶接したような立派な金庫が付いているものまである。

 しかし、最近は田舎の古き良き良心「誰も見ていないと思っても、お天道さまが見ているよ」なんてものも廃れてしまったのか、品物を取って、お金を入れずに何食わぬ顔で立ち去るなんて人も、たまにあるらしい。悲しいかな。良心転じて泥棒となる。

 これに対抗するためには、農家の人はたびたび仕事の手をとめて、良心市を見に行かねばならない。傍らに置いたイスにおじいちゃんやおばあちゃんがちょこんと座っているのを見かけることもある。
 
 そして先日、ついに「防犯ビデオ設置」と看板に書いてある良心市を見かけた。文明の利器を利用したすばらしいアイディアと思い、自転車を止めて覗いてみると、三脚の上にホームビデオカメラが乗っていて、野菜を睨んでいる。うーん、考えたね。しかし、旧モデルとはいえ、一応ビデオカメラです。野菜よりは値段が高いと考えられます。
 
 もしも私が泥棒だったら、ビデオカメラと野菜、どっちを盗んでいくだろうと、ちょっとの間悩んでしまいました。ともかく、どちらの良心もとりあえずまだ健在、のようです。