おかあさん10周年 |
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私が初めて『おかあさん』と呼ばれたのは、平成3年3月14日のことだった。 初めてのお産は、陣痛の割になかなか進まない。傍についてくれる人もおらず、ときどき助産婦さんが来て、モニターを見ては黙って去っていくだけ。冷たいタイル張りの分娩室で、一人きりの時間はとても長く感じられた。 この苦しみがいつまで続くのかと不安なって、取り乱した私を見て、助産婦さんは、きびしく一言、「おかあさん、しっかりしてよ!」。 私はその言葉に正直言ってとまどい、「『おかあさん』て誰のこと? 何でもいいから早く終わらせて〜」と叫びたい心境だった。 そんな「騒産」の末、生まれたわが子を抱いたとき、雑誌で読んだような感激は、私の中にちっとも湧いてこなかった。教えられるままに乳をすわせ、オムツを替えても、どこか預かった生き物の世話をしているようでぎこちない。この小さな命が私の子供という実感は、まったくなかった。 自信も自覚もなく、ただ責任感だけで世話をして2週間、あるとき赤ん坊がお乳を飲んだあとに、ニヤッと笑った。 その長男が、今年10歳の誕生日を迎えた。いま、3人の子供とともに「ちょっとその足どけてヨ!」なんていいながら、おしくらまんじゅうよろしく狭い湯舟に入っていると、温かい充実感が心の中に満ちてくる。みんなこんな風に、はだかんぼで私の中から出てきたんだなあと思うと、我ながらよくやったと自分をほめてやりたい気持ちになる。
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